会社名:株式会社ホテル小田急サザンタワー
業種:ホテル経営
設立:1997年1月
所在地:〒151-8583 東京都渋谷区代々木2丁目2番1号
従業員数:101名(2024年9月1日現在)
東京・新宿駅南口から徒歩3分という好立地に位置する小田急ホテルセンチュリーサザンタワー。375室もの客室があり、東京の絶景と東京野菜を中心とした地産地消に取り組んだ料理でおもてなしする居心地の良いホテルとして、1998年の開業以来、数多くの宿泊客を迎え入れてきました。総務部 総務課長の植田 隆寛 氏は「インバウンドの宿泊客の比率が高いことも特徴で、さまざまな国からのお客様をお迎えしています」と話します。
そして、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーが喫緊の課題となっていたのが、宿泊客からのフロントへの問い合わせや貸出備品などのリクエストへの対応の効率化でした。同ホテルでは、これまで宿泊客からの備品の貸し出しから、消耗品の追加、シーツやタオルといったリネン類まで、オーダーを電話でのみ受け付けていたといいます。
「お客様からのオーダーは、フロントで受け付けた後、ランナーと呼ばれるスタッフに引き継ぎ、客室にお持ちしていました。しかし、チェックイン時や夜間帯にはオーダーが混み合い、フロントスタッフの電話対応の回数増に加え、多忙による引き継ぎミスも発生しやすくなっていました」と植田氏は振り返ります。また、同ホテルはインバウンドの宿泊客が多かったことから、電話受付に際して多言語による対応も必要となっていました。
これらの課題解決に向けて、同ホテルが注目したのが、Alexa Smart Properties です。Alexa Smart Propertiesは、Amazonが提供するパーソナルAIアシスタントのAlexaをビジネスや公共サービス向けに提供するものです。Amazonと契約するソリューションプロバイダーを通じてAlexaをホテル、高齢者施設、自治体、マンション向けにカスタマイズできるサービスで、2023年12月より日本でも提供が開始されています。スマートスピーカーを通じて、宿泊客からの音声による問い合わせや、貸出備品のオーダーの受付にも対応できるようになっています。
植田氏は、「Alexa Smart Properties を採用した理由は、音声による操作ができることに未来を感じたことです。世の中にはタブレット端末などを利用したモバイルオーダーシステムもありました。一方で、人間にとって自然なインターフェースの1つは声であり、Alexa Smart Propertiesなら年齢・国籍を問わず、誰もが使えて、抱えていた課題も解決できるのではないかと考えました」と話します。
また、スマートスピーカーは不特定多数の宿泊者が利用するため、スマートスピーカーを介したホテル管理システム(PMS)への不正アクセスやマルウェアの感染など、セキュリティに関する心配もありました。一方、Alexa Smart Propertiesは、こうしたリスクを抑えながら堅牢なセキュリティを実現できるため、同ホテルへの採用を後押ししたといいます。
今回、Alexa Smart Propertiesの導入やアプリケーション内のスキル開発を支援したのが、TradFit株式会社(以下、TradFit)です。同社は、ホテルなどのさまざまな宿泊施設に特化したAlexa Smart Properties for Hospitalityを導入しているソリューションプロバイダであり、会話設計ノウハウや、日本の宿泊業界にローカライズしたサービスを提供し、宿泊施設への導入実績を重ねています。
小田急ホテルセンチュリーサザンタワーのAlexa Smart Propertiesの導入にあたっては、インバウンド利用者からのオーダー受付の80%以上をAlexa Smart Propertiesによって行えるようにすること、そして、多国語に対応できるようにすることを要件として掲げています。植田氏は、「ルームナンバーやオーダーされた物品の間違いを最小化することが重要なポイントでした。そして、できるだけお客様からのオーダーは、スマートスピーカーから受け付けられるようにして、業務の効率化を図りたいと考えていました」と話します。
小田急ホテルセンチュリーサザンタワーは、TradFitのサポートのもと、音声認識の調整を繰り返し行うことで、認識精度を向上させていきました。さらに、タッチパネル機能も加えることで、宿泊客からのオーダーを正確に受け付けられる仕組みづくりに注力しています。
現在では、全375の客室にスマートスピーカー「Echo Show 8」が設置され、多言語による宿泊客からのオーダー受付のほか、FAQをはじめとした館内情報の問い合わせ対応、館内情報表示を実現しています。
「Echo端末を介して宿泊客からのオーダーを受け付けると、TradFitが提供する備品オーダーシステムの管理画面に表示されるようになっています。さらに宿泊客の部屋まで備品を届ける担当者にはスマートフォンを支給しており、担当者はオーダー管理画面をリアルタイムで参照できるようにしています。これにより、オーダーが入ったらすぐに備品を届けられるようになっています」(植田氏)
Alexa Smart Propertiesの導入で、当初の目的であったオーダー受付の効率化を果たしています。「Alexa Smart Propertiesにより、オーダーをとりやすくなったことでスタッフの負担が軽減され、本来すべき業務に注力することができています。担当者からもオーダーをとりやすくなったとの声も聞いています」と植田氏は評価します。
このほかにも、多言語での音声による施設サービスの問い合わせや目覚まし時計の設定、天気予報案内なども可能となっています。
Alexa Smart Propertiesの導入により、オーダー受付業務の大幅な効率化を実現した小田急ホテルセンチュリーサザンタワー。植田氏は「今後はPMSとの連携により、さらなるサービスのDX化を促進することで、宿泊者の利便性と満足度を向上させるとともに、従業員にとってもストレスのない業務運営が実現できるように取り組んでいきたいと考えています」と意欲を見せています。
「歩み入る人にやすらぎを 去り行く人に幸せを」というホスピタリティ精神を理念に掲げ、1998年4月、新宿駅新南口に隣接して広がる遊歩道“新宿サザンテラス”の一角に開業。375室の客室、2つのレストランとラウンジ、会議や会食の利用が可能な4つの宴会場を有し、ビジネスからレジャーまで、国内外問わず多くの利用者を迎え入れている。
*取材時期 2025年4月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。